前回の「東日本大震災」第30次災害派遣報告書にも記載したが、東北の被災者の方で、私たちが大変お世話になった美容師のBさんという方が今回の第10次「熊本地震」災害派遣に志願され、参加した。
当日は、朝から準備を開始したが、ほどなくして、Tさんという被災して今は「T団地」という空港近くの大規模仮設住宅にお住いの方がやってこられた。
「手伝いまーす」とのことで、さっそく、絵心のある素晴らしい美容室開催のチラシを手作りで書いて、スーパーマーケットに交渉して掲示板に貼ってくださった。前回のチラシを作成してくださったのもこの方である。
このTさんは、最初は炊き出しを食べに来てくださっていたが、今ではスタッフとして、毎回お手伝いくださり、広報から調理まで何でもこなせる。現地ボランティアのYさんと同じく、非常に心強い存在である。(ここから我々が活動する19日まで仕事を休んで手伝ってくださった)
何度もメディアにも登場していて、そのたびに私たち救援隊のことを話してくださるのだが、やはり宗教ボランティアなのでほぼカットされている。本人も悔しいといつも言ってくださっているが、前回、テレビ局の方に直接交渉してくださって、救援隊は熊本テレビの取材を受けている。
美容室のほうは、その広報の甲斐もあって非常に盛況であった。取材があったので、間もなく金光新聞にも掲載されるが、美容師さんは東北で被災しているだけあって、話がはずんでいた。カットしてもらった被災者の方々も非常に喜んで帰っていかれた。少しでも心のケアになり、今回もお役に立てて大成功と言えよう。
「炊き出し」のほうも、回を重ねるごとに、仮設住宅にお住いのほとんどの方が出てきてくださり、コミュニケーションがとれる場になってきている。仮設住宅の管理人であるKさん(この方も家が全壊してこの仮設住宅に住むことを余儀なくされている。今回からは仮名Kさんとさせていただく)も、「こんなに人が出てくるのは、金光さんの炊き出しだけです。せめて少しでもなにかさせてください」と言って、毎回お世話くださっている。
今回も私たちが貼っていないのに、仮設住宅に2か所ある掲示板に「炊き出し」を知らせるチラシが貼ってあった。よく見ると、前回に持参したチラシの日付部分を作り変えてKさんが貼ってくださってあった。しかも、別の紙には「〇月〇日、金光教大阪災害救援隊さんが炊き出しをしてくださいます。みんなでありがたくいただきましょう」と書かれたものと、「〇日、から揚げ弁当」「〇日、焼肉丼」と書かれたものが貼ってあった。
前日にはそのチラシをコピーして、すべてのお宅に配布してくださっていた。
お借りしている仮設住宅の集会所は最終的に施錠しなくてはならなくて、いつも遅い時間までこのKさんはお付き合いくださるのだが、前回、そのKさんの使っておられる懐中電灯が少し古く、非常に暗かった印象があり、私たちの活動に限らずだが、いつも朝早くから夜遅くまで管理をなさっているKさんの足元が暗くて転倒でもしたら大変だと思い、お世話になる感謝の気持ちを込めて、大阪に帰ってから一つ、LED電球のついた明るいものを送らせていただいた。
すると届いたタイミングで非常に喜ばれて、お礼の電話が掛かってきたのであるが、そのときに、今起こっている現状や問題、生活の切実な内容、ご自身の境遇までも吐露された。ここでは書けないが、本当に辛い内容で、話すなかではKさんも時折声を詰まらせた。
19日の「炊き出し2日目」を終えると、やはり片付けが遅くなったが、Kさんは新しい懐中電灯で、私たちの行く先々を照らしてくださり、非常に助かるときがあった。喜んでもらえてよかった。
最終日の朝食時、塚本隊員と話しているなかで、塚本隊員も今回のKさんのテンションが高いことに気づいていたようで、ここまでの経緯を少し話した。
「家を失った方々が暮らす仮設住宅で、同じく家を失ったKさんが管理人として、自らも苦しみの真っ只中にあるにもかかわらず、他の住民のお世話をし、我々の炊き出しを喜ぶ被災者を見ては、自分のことのように喜ぶ。そして、我々に心底、感謝の気持ちをもって最後までお付き合いくださる姿がなんとも言えない」
そう話していると、急に「ちょっと待って・・・それ以上言わんといて・・・」と言って、塚本隊員が大粒の涙を流したのである。
まだ朝の7時にもなっていない時間、ホテルの満席の朝食会場で人目をはばからずに大粒の涙を流し、そして「続く限り、私も最後までこのボランティアに参加させてもらって、ご用をさせてもらいたい」と言った塚本一眞隊員が非常にありがたく思えた。本当の仲間と言える隊員がここに誕生した瞬間ではないだろうか。
長くやるなかで、こうやって同じ気持ちの仲間が集まったり、心が通じることで支援者が増えたり、募金や品物をいただいたりして、この「熊本地震」における災害派遣も10回目を迎えている。「東日本大震災」の派遣を合わせれば40回目である。
金光教中近畿教区の強靭なバックアップがあり、全教の支えがあり、地元の住民、被災者からの支援もいただき、本当にありがたく、もったいないことである。
救援隊として、白神隊長以下、全力を尽くしてお役に立ちますと、いつも心に誓っている。
以上、「熊本地震」第10次災害派遣の報告とさせていただきます。
教区の先生方をはじめ、全教の皆様にはいつも本当に多くのご支援を賜っておりますこと、御礼申し上げます。また、この上ともご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。