◎全体をとおして
この美容室の開催にあたり、私たちは一切広報を行っていない。「この度も美容室を開催する」と言った時点で、被災者の方が自らチラシを作成し、よかもんね(益城町中心部にある地域で一番のスーパーマーケット)、セブンイレブン(コンビニ)、空港保育園などに交渉し、チラシを貼ってまわってくださった。そのため、最後には断らなければならないほどの来場があった。
この初日の美容院に引き続き、二日目、三日目の「カフェ」「炊き出し」も大盛況であった。被災して仮設住宅にお住いの方々は、口々に喜びの声を聞かせてくださり、身に余る心のこもった差し入れもたくさんいただいた。被災して大変な方々から差し入れをいただくことは大変心苦しいと思ったが、どう遠慮しても、「私のほんの気持ちだから、受け取れ!」と最後には怒られながら、ありがたくいただいた。
実は、今回派遣が決まった段階では、スタッフの人数が全く足りないと心中穏やかではなかったが、結局蓋を開けてみれば、総勢15名と、過去最大の人数にて奉仕することが出来ている。
東北の時にもこういうことがあったことを思いだした。あの時は、ボランティアの人数も時間の経過とともに、だんだんと減っていき、「みんなの意識も薄い」と不満を思ったが、その日も今回のように、だんだんと現地でのスタッフが募っていき、最終的に、かなりたくさんの人数で奉仕ができた。やはり、自分の力でやっているのではなく、神様のお働きの中での活動であると、今回もつくづく思わされた。
今回の美容室に使わせていただいた公民館は木山教会・矢野恵美子先生が手配してくださり、「炊き出し」にあたっては、現地、南九州教区・信徒会の方から前もって連絡をいただいており、前南九州教務センター林所長の奥様、現南九州教務センター菊川次長の奥様がスタッフとしてご用くださった。また、北九州から信奉者が一名お越しくださった。
12月には「東北派遣」を控えており、今回の派遣が今年最後の「熊本派遣」ということで、写真を一枚、私の携帯電話から白神隊長に送った。
ほどなく白神隊長から電話があり、「私、今から行くわ!」と言われたので、冗談かと思い笑っていたのだが、「今年最後の派遣で、挨拶まわりもある。これは隊長としての役割だから、たとえ一泊でも行かせていただきたい。ホテルと新幹線を押さえたから、みんなには行くことは内緒にしといてな」と言われ、夕方には到着され、皆で熊本教会のご神前にあがった。隊員は非常に驚いていた。
「炊き出しの」二日目が終わり、膨大な量の備品の片付けにあたっているとき、大雨が降ってきた。「炊き出し」時には、たいした雨ではなかったので良かったなと思って作業を進め、やっと車への積み込みも終わって、帰ろうと電気も消したときに、現地の管理人さんが私を呼び止めた。
真っ暗で、大雨が降るなか、「あの、これを・・・」と言って、一枚の紙きれを渡された。そして、小さな声で、「感謝しています」とおっしゃった。
Kさんとおっしゃるこの方は、益城町安永地区で被災し、家が全壊となってこの仮設住宅にお住いである。そしてこの安永地区仮設団地の管理人を任されている方で、私たちの訪問を心待ちにしてくださってあり、朝から晩まで、私たちが行くと、「ありがとうございます、本当に遠いところから、ありがとうございます。大変でしょう」と気づかってくださり、お世話をしてくださる。
その、一枚の紙には、次のように書かれてあった。
「 感謝の受領証 金光教大阪災害救援隊様
この度は、私たち安永仮設住民のために再三にわたる炊き出しを寄贈いただき誠にありがとうございます。今の私たちには、一枚の感謝を込めた受領証しかお渡しできませんが、住民一同の心を込めて、感謝の受領証を渡させていただきます。
平成28年11月18日
益城町安永仮設団地 自治会長 ○○○○」
もっと、渡す場面もあったと思う。しかし気遣って、作業の邪魔にならないようにと、全てが終わって、真っ暗になった瞬間に渡された。大雨で濡れないようにシートに入れて渡してくださった。
「今の私たちには、一枚の感謝を込めた受領証しかお渡しできませんが」というところまで読むと、胸にこみあげるものがあり、歯を食いしばって涙をこらえるのが精一杯であった。その方の背景には、実はここでは書き記せない残酷な現状を抱えておられることを知っているが故に、余計に胸を締め付けられるものがあった。
最後まで、この方々のためにご奉仕をさせていただこうと、改めて思う場面であった。隊員一同も、同じ気持ちであろうと思う。
本年は、3月の「東日本大震災」第29次災害派遣にはじまり、4月の「熊本地震」以降、ここまで「熊本地震」第9次災害派遣まで活動をすすめさせていただくことが出来ました。
これは、教区の皆様、全教の皆様のお祈りのなかで行わせていただいた活動にほかなりません。本当にありがとうございます。
上記、「感謝の受領証」は、金光教大阪災害救援隊の勲章でもあり、皆様の支えによって、皆様にいただいたものであると思います。この上とも、お世話になりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
以上、「熊本地震」における第9次災害派遣の報告とさせていただきます。